中卒って、やっぱりダメですね。
「もう学歴社会じゃない」という教師の言葉を真に受けたのが運の尽きでした。
まあそれでなくても悪いことばかりして、頭も絶望的に悪かった僕ですから、先は知れていただろうけど、中学を卒業してからは、土方の仕事ばかりです。
とはいえ、まだ若かったってこともあって、十代とか、それくらいの頃はどうってことないんです。
周りに友達もいたし。
でも、みんな高校を卒業して、大学に入って、という感じになってくると、「え? 俺の人生って、もうとっくに終わってるんじゃないの?」と気付いてしまいました。
それからは仕事にも身が入らなくなって、休みがちに。
で、先輩に説教されて、それでもフラフラしながら作業してたら、怪我をしてしまいました。
そっからもう、すべてが嫌になって家に引きこもって、親にも愛想を尽かされて、と、まあ、そんな転落人生でした。
でも、「俺だってまだまだ何とかなるはずだ」という、なんか、根拠のない自信みたいなものはあるんですよね。
だから、とりあえず地方の田舎から脱出しようと、そう考えたわけです。
東京なら何とかなるはずだ、俺の居場所だって、どこかにあるはずだ、と。
まあ良い言い方をすれば、転職ってやつを本気で考えだしたんです。
そして実際、残った金をかき集めて出てきた東京で、バカでも稼げる仕事を探して、もう土方は嫌だから何か接客業でもと考えて見つけた仕事が、メンズバー。
これはもう、職場環境にも、仕事の内容にも、天と地ほどの差があります。
でも、とりあえず面接に行ってみたら、「肉体労働で鍛えた身体は結構ウケる」と聞いて、自分でもよくわからないままに採用してもらえたわけです。
ただ、僕の正体は、地方の田舎から出てきたただのバカな中卒です。
当たり前だけどそんな奴がトントンとうまくいくわけもなくて、しばらくは下積みみたいな日々が続きました。
それでも楽しかったですね。
失敗もいろいろ経験したんですが、バカでも稼げるって噂通り、働いた分はお給料に反映してもらっていたので、それが働く意志にもなっていました。
僕が変わることができたきっかけは、あるお客様との出会いだと思います。
その方は、すごく読書が好きな方で、いろいろと読んだ本の話をしてくださったんですが、僕みたいなバカでも読める本とかもすすめてくれて、それで読書ってもんの魅力にハマりました。
それからは、読書で勉強するうちに自然と身についた知識とか言葉とか、そういうものも活用しながら接客するようになったんですが、やっぱり、それで俄然、お客様の反応が変わりましたね。
おまえ中卒なのに面白いしなんか頭良さげじゃん、って、「ギャップ」を評価してもらえるんです。
おかげで今は、そこそこいいマンションにも住んで、地元にいた頃と比べると、なんというか更生できたって感じがしています。
自分にこんな転機があるなんて、考えもしなかったですね。
ただの「転職」じゃなくて、自分の成長に繋がる仕事に出会えたと思います。