これまで、僕は、自分の思ったことをほとんど実行することもなく、静かに生きてきました。
希望とか夢とか、挑戦とか成長とか、そういうものにも無縁な、退屈な人生でした。
そして、そのまま目立たない存在として、社会の片隅で粛々と生きていくんだろうと思っていたんです。
ただ、どこか、そのような既定路線を歩むことに、抵抗がないわけでもありませんでした。
できることなら「人生を変えたい」、そんな風にも考えてはいたんです。
それで思い切って飛び込んだのは、メンキャバの世界でした。
本当に、びっくりするくらいの飛躍です。
だって、ほとんど接客業の経験だってない、半分引きこもりみたいな自分が、いきなりメンキャバなんだから。
なんだかその選択をした自分自身でさえ、ちょっと、それが信じられないくらいです。
きっかけは、メンキャバの仕事をしている友人が、「おまえはルックスもそれほど悪くないし、試しに一回くらいはやってみろよ」と励ましてくれたことでした。
そこで、上下関係とか、あと派閥とか、そういうものには無縁な、だけど華やかで稼げそうなメンキャバというものに行きついたんです。
面接はとにかく緊張しました。
生まれてこの方、ここまで緊張した覚えってないです。
でも、そんなガチガチの僕にも、お店の方はとにかく優しい言葉で、「頑張ってみたいなら応援するよ」と言ってくださり、これは「人生を変えたい」という自分の希望を叶えるチャンスだと決心しました。
とはいえ、そんな風に固く心だけ決まっても、最初は仕事になりません。
失敗ばかりでした。
ただ、失敗するのは、「挑戦」しているからだ、と自分に言い聞かせて、多少のことにはくじけずに半年頑張ってみたんです。
そうしたら、今では、以前の自分からは考えられないくらい、何事も前向きに、チャレンジングに考えられる性格になっていました。
端的に言えば、自信がつきました。
僕はこの年齢になってはじめて気づいたのですが、人生において「経験」ほどの価値があるものはあるでしょうか?
数多くの失敗経験から、いろいろと学んで、お客様に満足してもらえることも増え、「俺だって捨てたもんじゃない」という意識が芽生えはじめたんです。
それからは、指名の数も段違いに増えました。
お金を稼いで、服とか食事もいいものにして、そうすることで、より自信を強化することができたと思います。
生まれ変わりたいという志も、傍目に見ればどうかわかりませんが、自分では、果たせたと思っています。
おかげで今では、この仕事ではもちろんですが、どんな人付き合いにも臆することはありません。
というか、日々、仕事で鍛えられているからでしょうね。
普段から「喋り上手だね」なんて褒められることも増えて、なんだか、毎日が楽しく充実している気がします。
「自分の力でお金を稼いで、人より少しいい生活をする」ということが、ここまで心を満たしてくれるものだとは想像もしませんでした。
僕は、この仕事のおかげで変わることができたと思います。